メッセージ


2002年9月吉日

東京大学先端科学研究センター
助教授 福島智

 「これからもユーザー本意のサポートを」

 今、「Try In Heart」のページにアクセスした。シンプルで分かりやすい。私は盲ろう者なので、画面が見えないだけでなく、音声出力も利用できない。ピンディスプレイだけがたよりだ。
それでもこのページは読みやすかった。そして、暖かかった。きっと、スタッフの大川君と佐藤さんの人柄が出ているのだと思う。「Try In Heart」の名前もいい。ユーザーの生の声が紹介されているのも新鮮だ。
スタッフの一人大川君と私は同級生。初めて会ってから29年になる。ドラムがうまくて、手先がきようで、優しい男だ。
パソコンが好きだとは知っていたけれど、今回視覚障害者ユーザーへのサポートを始めたと聞いてとてもうれしい。

ITは人の生活スタイルを変え、社会を変え、やがて人類の文明を変えるだろう。しかし、その変化は「人と機械」という2項関係におけるインタフェースだけでは、豊かなものにはならないのではないか。「人と、機械と、人」、さらに、「人と、人と、機械」という3項関係が大切だと思う。とりわけ重要なのは、「人と人」のインタフェース、すなわち人間同士の関わりの側面だ。
どれほどすぐれた技術も、人から人へのノウハウの伝達とフォローがなければ、安定した技術利用はできないだろう。

そう考える時、「ユーザー中心のデザイン」、「ユーザー中心のサポート」を実現するうえで、たとえば、視覚障害当事者である大川君がサポートにあたることに意義があるのだと思う。
アクセシビリティーはだれのために必要なのか。ユーザビリティーの評価はいったいだれが行うのか・・・。
ユーザーでもある大川君が同時にサポートにもあたるという実践をとうして、このような根本的な問題への答えが、恒に具体的な形で示されていくだろう。

 大川君、そして「Try In Heart」の今後の活躍に期待したい。





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